2019. Feb-2
医学部 眼科学講座
「加齢黄斑変性における房水中のサイトカイン濃度」
Aqueous Humor Levels of Cytokines in Patients with Age-Related Macular Degeneration.
Mimura T, Funatsu H, Noma H, Shimura M, Kamei Y, Yoshida M, Kondo A, Watanabe E, Mizota A.
Ophthalmologica.2019;241(2):81-89
加齢黄斑変性は成人の失明原因の上位に位置する疾患である。本疾患においては血管新生が主な原因と考えられ、血管内皮増殖因子(VEGF)が重要な役割を果たしているものと考えられている。通常治療には抗VEGF抗体の硝子体注射が行われている。しかしこの治療に抵抗性の症例も存在し、またいくつかの研究では硝子体中のVEGFの上昇が認められない症例もあるとの報告もあるため、VEGF以外のほかの要素も本疾患の発症に関係あるのではないかと思われる。このような背景のもと、本研究ではVEGFを含めた加齢黄斑変性の症例とコントロールとして白内障の手術前の症例で房水(眼内を循環する水)を採取して、11種類のサイトカインを測定した。測定したサイトカインはVEGF, sVEGFR-1, sVEGFR-2, PGF, TNF-
α, sICAM-1, MCP-1, IL-6, IL-8, IL-12, IL-13である。その濃度をコントロールと比較するのと同時に、加齢黄斑変性のタイプによる比較、および加齢黄斑変性の症例でサイトカイン同士の相関を検討した。加齢黄斑変性においてはコントロールと比較してVEGF系のサイトカインとMCP-1, IL-6,IL-8が有意に上昇していた。加齢黄斑変性のタイプによる違いは認められなかった。また加齢黄斑変性の症例の中では、sVEGFR-1はsVEGFR-2と、PGFはMCP-1とIL-8と、sICAM-1はMCP-1とIL-8と、MCP-1はIL-6とIL-8と有意な相関がみられた。結論として加齢黄斑変性では房水中のVEGFとVEGFレセプター 関連のたんぱく及び炎症関係のたんぱくの上昇がみられた。これらの結果から抗VEGF治療でも改善しない加齢黄斑変性の症例は何らかの炎症の要素が関与しているのではないかと推察され新たな治療法が必要となる可能性が示唆された。
文責:溝田 淳
(2019.04.22)