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新任館長の挨拶


 
 
医学部産婦人科学講座 主任教授 綾部琢哉

 「薔薇の名前」に出てくる図書館が、古来の図書館というイメージをよく具現していると思います。文字と印刷技術とにより書物が作られ、それを保管して公開し未来へと繋げる。情報は稗田阿礼によるような口伝ではなく、木片、粘土板、紙媒体により伝えられ、精度を保ちながら広く共有されました。
 組織の中での職務は、特に技術的な修練の入る余地がない領域では、情報に接する機会の多寡とその質により階層づけられてきました。
 書物が物質として貴重だった頃、一度読了されたら殆ど再利用されない書物を皆で読むことにすれば、書写による誤差を防ぎ、物質資源も節約できました。
 生まれた時から電子媒体とともに生きている今の世代にとって、世界観は大きく変わりました。先人の努力の結晶である書籍に囲まれた環境下でも、その霊気に威圧されることは無さそうです。情報は一瞬で共有され量的な差異は階層形成における意味を失いました。
 この時代にあって、図書館の意義も変化を求められています。
 人事評価に際して少なくとも見かけは「客観的」であるものが求められ、論文数とその点数が数的評価に繋がるのは世界中共通のことです。その論文の情報に知的財産権が付与され、共有に際して経済的な問題が生じてきます。紙媒体の情報を個々人が購入していた時に比べ、図書館が1冊購入して皆が閲覧するようになれば、出版する側に経済的な不利益が生じますから、図書館が支出する電子媒体での購読料が利用者数により差がつくのは当然です。しかしながら、今はその経済的基準が曖昧なままで、これも世界規模での問題です。
 利用者が電子媒体を通じて情報に自由に接することができるような態勢を維持すること、これがおそらく、今の図書館に求められる姿なのかもしれません。
 乃木希典が目を通した書物には色付きで様々な印が記入されていたそうです。それを辿ることによって読み手の思考回路をも辿ることができる・・・紙媒体を精神的遺産として感じてしまう古い人間が、2019年4月1日付で図書館長を拝命致しました。宜しくお願い申し上げます。
 2019年4月吉日
 
 

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貸出ランキング

  • 医療情報科学研究所編. -- Medic Media, 2011. -- (病気がみえる / 医療情報科学研究所編 ; v. 7).<図書>
  • 医療情報科学研究所編. -- 第4版. -- メディックメディア, 2017. -- (病気がみえる / 医療情報科学研究所編 ; v. 2).<図書>
  • 医療情報科学研究所編. -- 第2版. -- Medic Media, 2014. -- (病気がみえる / 医療情報科学研究所編 ; v. 8).<図書>

Paper of the Month



2019. Feb-2

医学部 眼科学講座 

「加齢黄斑変性における房水中のサイトカイン濃度」
Aqueous Humor Levels of Cytokines in Patients with Age-Related Macular Degeneration.
Mimura T, Funatsu H, Noma H, Shimura M, Kamei Y, Yoshida M, Kondo A, Watanabe E, Mizota A.
Ophthalmologica.
2019;241(2):81-89

 加齢黄斑変性は成人の失明原因の上位に位置する疾患である。本疾患においては血管新生が主な原因と考えられ、血管内皮増殖因子(VEGF)が重要な役割を果たしているものと考えられている。通常治療には抗VEGF抗体の硝子体注射が行われている。しかしこの治療に抵抗性の症例も存在し、またいくつかの研究では硝子体中のVEGFの上昇が認められない症例もあるとの報告もあるため、VEGF以外のほかの要素も本疾患の発症に関係あるのではないかと思われる。このような背景のもと、本研究ではVEGFを含めた加齢黄斑変性の症例とコントロールとして白内障の手術前の症例で房水(眼内を循環する水)を採取して、11種類のサイトカインを測定した。測定したサイトカインはVEGF, sVEGFR-1, sVEGFR-2, PGF, TNF-α, sICAM-1, MCP-1, IL-6, IL-8, IL-12, IL-13である。その濃度をコントロールと比較するのと同時に、加齢黄斑変性のタイプによる比較、および加齢黄斑変性の症例でサイトカイン同士の相関を検討した。加齢黄斑変性においてはコントロールと比較してVEGF系のサイトカインとMCP-1, IL-6,IL-8が有意に上昇していた。加齢黄斑変性のタイプによる違いは認められなかった。また加齢黄斑変性の症例の中では、sVEGFR-1はsVEGFR-2と、PGFはMCP-1とIL-8と、sICAM-1はMCP-1とIL-8と、MCP-1はIL-6とIL-8と有意な相関がみられた。結論として加齢黄斑変性では房水中のVEGFとVEGFレセプター 関連のたんぱく及び炎症関係のたんぱくの上昇がみられた。これらの結果から抗VEGF治療でも改善しない加齢黄斑変性の症例は何らかの炎症の要素が関与しているのではないかと推察され新たな治療法が必要となる可能性が示唆された。
文責:溝田 淳
(2019.04.22)
 

Paper of the Month



2019. Mar-1

医学部 産婦人科学講座 

「Fetal movement acceleration measurement (FMAM) recorderを用いたsmall-for-gestational児の胎動計測」
Counting fetal movements of small-for-gestational infants using a fetal movement acceleration measurement recorder.
Morita M., Ryo E., Kamata H., Seto M., Yatsuki K. 
J Matern Fetal Neonatal Med.
2019 Mar 5:1-7.

 我々は自宅で入眠中に胎動を測定できるFMAM recorderを用いた研究を世界に先駆けて行っている。本研究はsmall-for-gestational age (SGA)の胎動についての研究である。母体自覚による胎動減少とSGAが深く関係していることはよく知られているが、客観的検査としての超音波検査では胎動減少とSGAが関連しているかは明らかになっていない。超音波検査では測定時間が1時間程度で、胎動が十分に評価できたとは言えないからである。これに対してFMAM recorderは長時間の胎動計測が可能である。対象はSGA児を出産した女性13人。方法:(1)胎動に関する5つのパラメータ(胎動占有割合、平均胎動数、5分以上持続する無胎動の頻度、平均持続時間、最長持続時間)を、別の研究で作成した基準値曲線#1)上にプロットした。基準値曲線は正常妊婦64人から1晩あたり4時間以上計測できたデータを用いて作成している。(2)応答変数として胎動に関するパラメータ5つ、説明変数2つ(SGA群/正常群、妊娠週数)に対して線形回帰分析を行い、P値0.05未満を有意差ありと判定した。結果:SGA群では計38データ、275時間の記録が得られた。(1)胎動占有割合では14データ(36.8%)が基準値の10%tile未満であった。平均胎動数では13データが(34.2%)が10%tile未満であった。無胎動時間の頻度、平均持続時間、最長持続時間についてはそれぞれ12データ(31.6%)、13データ(34.2%)、15データ(39.4%)が基準値の90%tileを超えていた。(2)SGAは胎動占有割合と平均胎動数を減少させ、無胎動時間の頻度、平均持続時間、最長持続時間を増加させる要因であった。胎児発育不全では低酸素血症になりやすく、低酸素血症のため胎動が減少するといわれているが、胎児発育不全自体で胎動が減少するかはこれまで明らかではなかった。本研究の対象例は妊娠・分娩中に児が低酸素血症となっていないことを確認している。従って、本研究によって胎児に低酸素血症がなくても胎児発育不全は胎動減少と関連していることを証明した。
 #1 Pediatr Res. 2018;83:961-968
文責:森田 政義
(2019.05.28)